日記
カポエイラ百科事典vol.18
♪ Caboclo não vai na serra,
seu gado berrou na malhada…♪
(カボクロは山に行かない、彼の家畜が鳴いているから)
今月練習しているこの歌。
穏やかで美しいメロディの中に、どこか哀愁のこもったメッセージを感じます。
歌の中で「カボクロ(caboclo)」は、自由を求めながらも地主の土地に縛られた人として描かれています。
「山に行かない」という一節は、自然や自由を象徴する“山”へ行けなくなった、
つまり自分のルーツ(森・土地・自由)から引き離された存在を暗示しています。
🌳森とともに生きた民
カボクロとは、もともとブラジルの先住民とポルトガル人の間に生まれた混血の人々を指します。
彼らはアマゾンや内陸部の森の近くで暮らし、漁や農業、薬草の知恵を受け継ぎながら、自然とともに生きてきました。
その姿は、近代化の進むブラジル社会の中で「素朴さ」「誠実さ」「自然との調和」の象徴として語られました。
🧬 民族分類としてのカボクロ
ブラジル社会には、混血を示す多様な呼称があります。
カボクロはその中でも特に「自然と結びついたブラジル人」を象徴する存在です。
呼称 |
混血構成 |
意味合い |
Mulato(ムラート) |
白人 × 黒人 |
アフリカ系とヨーロッパ系の混血 |
Cafuzo(カフゾ) |
黒人 × 先住民 |
よりアフリカ的特徴を持つ混血 |
Caboclo(カボクロ) |
白人 × 先住民 |
森の民・土地に生きる人々 |
Mestiço(メスチーソ) |
混血全般の総称 |
あらゆる血統の混 |
この分類は単なる人種区分ではなく、ブラジル文化の重なり合いの象徴でもあります。
とりわけカボクロは、ヨーロッパの理性と、先住民の自然性が合流した存在。
「自然と文明のあいだで生きるブラジル人」の原型とも言えます。
カポエイラの歌の中で「カボクロ」が登場するとき、それは単に過去の人物ではなく、自然や故郷、ルーツに対するリスペクトとして響いています。